野球

2011年5月14日 (土)

データで読む 常識をくつがえす野球(小林 信也)

プロ野球の各データをもとに、野球ファンなら自然と持ってしまう偏見を検証している本。

「野球の見方が180度変わるセイバーメトリクス」(※1)がセイバーメトリクスの手法全般を丁寧に解説しているのに対し、「野球人の錯覚」(※2)のようにケースに応じて、「本当にその仮説が正しいのか?⇒そうとは言いきれない」とデータを元にその根拠を示している。

データ分析と言っても大変に読みやすく、著者も野球経験がありプロ野球のスポーツライターでもあるので、選手の話や野球経験者がゆえに、疑うことなく抱いていた常識を都度織り交ぜているのも興味深い。


データから読み取れる内容はあくまで著者の主観もある(客観的なデータを用いているとは言え)。
しかし、それは当然でありビジネスでもデータを元に最後は外部環境や会社の戦略、理念をもとに決断するのであり、監督などがそれぞれ違った結論を出しても良いのである。


その中で元ロッテのバレンタイン監督の事例は大変に興味深い。
テレビや新聞では絶対に書かれない采配の根拠やエースの役割などを知ることが出来る。


「野球抄」を出版し、セイバーメトリクスの生みの親であるビルジェイムズ氏は、「野球の見方を面白くする」ことが分析結果を世に広めた理由だという。
新しい野球の醍醐味が見つかるきっかけとなる本である。

※1;野球の見方が180度変わるセイバーメトリクス


※2;野球人の錯覚

2011年5月13日 (金)

楽天野球団のシークレット・マネージメント たった5年で成し遂げた奇跡(島田亨)


楽天野球団の社長による球団創設時から、ブラウン監督就任発表までを社長としての視点で球団の取り組みを振り返っている内容。

チーム強化についてと黒字化経営に向けたスタッフサイドという、経営者としての立場から田尾監督や野村監督交代の理由など、経営判断に至った根拠についても触れている。


リクルートを経てインテリジェンス創業メンバーであり、マネジメントの経験を持つが野球界においては素人である。
プロ野球を利益を生むビジネスにするために、ビジネスライクに仕事をしているイメージが付きまとうために、野球ファンからは必要以上に勘違いをされることが多いかもしれない。

しかし、一年目に黒字化したことが他球団にどれほどのインパクトを与え、パリーグを中心に親会社のプロ野球に対する考え方を大きく変えた実績はあまりにも大きい。
ここからプロ野球の球団経営の在り方は大きく変わった。

※大坪正則氏の「パ・リーグがプロ野球を変える 6球団に学ぶ経営戦略」に詳細が書かれている。


もう少し踏み込んだリアルな現実を書いて欲しかった気もするが、それは次回に期待したい。

また、ブラウン監督を就任させた理由までは書いてあるが、その後一年で契約破棄をして星野監督就任に至ったプロセスも今後是非伺いたい。


ベンチャー企業では理念をもとに事業展開をしていくが、上場企業はもちろん上場準備の段階でも短期的な利益が絶対に求められるために、乱暴かもしれないが利益になるのであれば朝令暮改があっても仕方がない部分はあると思う。

その感覚とプロ野球ファンの感覚はなかなか相容れないこともあるかと思うし、ファンには今回のように本を利用するなりウェブでも何でも良いが、決断に至ったプロセスを少しでも可視化してくれることを期待したい。

それだけ経営が期待されている球団であると思う。



2011年5月12日 (木)

「さらばヤンキース 我が監督時代(ジョー・トーリ/トム・ベルデュッチ)」

MLBの96年~07年シーズンでニューヨークヤンキースの監督を務めたトーリ氏の、ヤンキース時代の回顧録である。松井秀喜や伊良部、井川が入団したときの監督でも有り、日本でも知名度は高い監督である。

絶対的な経営者で名物オーナーであるスタインブレナーとの折衝、実力も個性もMLBで最も強いメンバーが集まるチームをどのようにマネジメントしてきたか、また最後はチームが下降していくプロセスがストレートに書いてある。


ヤンキースファンだけでなく、またMLBの選手やチームにそれほど詳しくなくても、第6章「MLBの情報革命」は特に関心を抱けるかもしれない。

「マネーボール」出版に伴い、アスレチックスのビリービーンGMの強化手法やセイバーメトリクス(それ以前から知られてはいたが)が、当時のメジャーリーグ各球団にどのような影響を与えたかが、リアルに分かる。

どのような戦略をとるかは各球団の外部環境によってくるし、アスレチックスを必ずしも模倣することが正しいとは言えなくても、かなりの衝撃を与えたという事実が伝わってくる。


かなりのヤンキースファンでないと各シーズンの戦績やシーン、選手の特徴などがすぐに思い浮かばないと思うが、それでもMLBを代表する球団の監督の考え、理念、マネジメントやコミュニケーション手法はどのようなスタイルかを知る上でも楽しめる。

2011年5月10日 (火)

「野球の見方が180度変わるセイバーメトリクス(データスタジアム)」

セイバーメトリクスとは、「膨大な野球データを統計学の視点から分析することで新たな選手評価や戦術を策定する分析指標全体を指す」というのが概ね定義である。

本書では「計算機とデータさえあれば強いチームを可能であるか」と自問自答しながら、「万能ではないのが有利である」とそれぞれの根拠も明確になっている点で、新旧の野球ファンいずれにも納得していただけるのではと思う。


セイバーメトリクスの生みの親であるビル・ジェイムズ氏が野球分析に取り組んだ真の目的は、「野球の見方面白くすること」だと言う。

確かにデータ分析はチームの勝率向上に役立つだろうと思うと同時に、野球ファンが新しいプロ野球の楽しみ方を知ることで大いに意義があると思う。

セイバーメトリクスを使用して野球の偏見を解く書籍は何冊も出ているが、公式記録のデータ化と分析ツールを提供しているデータスタジアム社によるこの本が、最もよく纏まっている。
セイバーメトリクスについて、まずどんなものか知りたいと言う方には、最も適した本である。


また、先入観や思い込みにとらわれずデータ分析を駆使することで、正しい現実を知って意思決定をするというのは、どのビジネスでも実行されていることである。

もちろんデータは万能ではないが、BI(ビジネスインテリジェンス)ソフトウェアが日本でも導入が進んでいるように、データの活用の仕方について知る上でも良書である。

2011年5月 8日 (日)

「もしあなたがプロ野球を創れと言われたら(村山哲二)」

プロ野球の独立リーグであるBCリーグを構想段階から設立、現在まで運営を行っている著者の奮闘気であり、独立リーグを知る上でも貴重な本である。

タイトルそのままの通り「プロ野球を創りたい」と相談を受けたことから始まり、四国リーグを参考にした調査や理念、戦略立案を試行錯誤しながら行い、実現させるために電通東日本を退職して事業を起こしている。


独立リーグとしてのポジショニング、BCリーグとしての理念や現場に根付かせるプロセス、地域密着をするためにどのようにアクションするかなど、単なる情熱ストーリーではなく戦略を細かく書いてある点でも、ビジネスでも参考になる箇所が多い。

ちなみに著者はアルビレックス新潟の運営プロモーションにも電通東日本として関わってきた経験がある。


MLBから非公式ながら提携の打診に対する判断は、読者の意見が賛否別れるかもしれない。
提言も含めてNPBへの思いは十分に理解できるが、判断の根拠をさらに詳しくオープンにして頂く機会を切望する。

それだけBCリーグには日本野球で重要なポジションにあると思うし、今後もより一層の期待をせずにはいられない。

2011年5月 7日 (土)

「たかが草野球で人生が変わる」(熊本浩志)


amadanaで有名なデザイン性のある家電製品を提供している企業の社長による、草野球の醍醐味が書かれている本である。
自身がプレイするチームの活動内容や草野球の奥深を、ビジネスの戦略と合わせながら纏めており、単なる「野球への思い」に留まらない内容である。

草野球についてここまで書かれた本は見たことがない。


「草野球(軟式野球)を知ると言うこと」、「セルフマネジメント」、「勝つためのコミュニケーション」、「フレームワーク」等等の切り口により、野球が心底好きな人達が情熱だけでなく、どうしたら個々とチームの能力が高まり勝つことができるか?を突き詰めている。

本書によると草野球人口は700万人と言われているが、年代問わず草野球をプレイしている人には、かなり実践的に役立つと共に野球をする面白さに改めて気付くことが出来るのでは?と思う。


※私事だが中学野球部の先輩(偶然だが大学も同じ)がこのチームのメンバーで、発足時から関わっていて
  本書に登場したことには驚いた。

2011年5月 6日 (金)

「プロ野球解説者の嘘」(小野俊哉)


「首位打者とホームラン王が出ている横浜が最下位」、「プロ野球新の259本塁打と球団新の738得点を挙げた巨人が3位」、これらを「投手力が悪いのでは無く打力に問題があった」と結論付けている。

プロ野球の公式記録を分析し、上記も含めて正確な情報を収集して仮説を立て、本書では検証している。これもセイバーメトリクスの一つ。


また、プロダクトポートフォリオマネジメントなどフレームを使用して、So What's?にまで落とし込んでいる点もユニークである。


刺激的なタイトルであるが、何も解説者を批判している本では決して無い。
読者に野球の見方や考え方にオプションを与えることで、野球の面白さを与えてくれていると思う。

特に普段から戦略策定やマーケティングに関わっている方は、馴染みやすい本かもしれない。


ビジネスの場面と同様に思い込みを排除して事実を洗い出して分析し、仮説を立てるというプロセスを野球に当てはめた本である。

この本に書かれている仮説や結論が正しいかどうかよりも、ビジネス上で作る戦略などは野球にも応用が出来るという点で、新鮮な切り口を与えている。

2011年5月 5日 (木)

「再生力―危機を打ち破る『人生版・野村ノート』」(野村克也・田原総一朗)

野村克也と田原総一朗のよる、組織の再生をテーマにした対談集。

野村氏が選手、監督時代を通じて下位チームをどのように意識改革して勝てる組織にしたのか、マネジメント手法や理念を田原氏の深く掘り下げた質問も含めて明かしている。


技術的な内容ではなく、「精神面の育成と意識改革をどのように行ったのか」、「どうしてそのようなことが必要なのか」等が中心であり、「野村ノート(※)」などと重複するエピソードもあるが、田原氏による社会背景の説明や野球に捉われない説明や指摘もあるので、より一層説得力が増している。


また2人の会話のテンポもよく、読みやすい。
組織を管理している管理職の方には特に参考になるビジネス書である。

※「野村ノート」


2011年5月 4日 (水)

「マネーボール(マイケル・ルイス)」

ビジネス書として有名であり、且つ野球の戦略にも一石を投じて計り知れない影響を与えた本。「セイバーメトリクス」という言葉も日本で話題にさせた。
野球のルールが分かっている方であれば、問題なく理解できる。


NYヤンキースの1/3の投資額で00〜03年と4年連続でプレーオフに進出したアスレチックスのGM、ビリー・ビーン氏の革命的な改革手法を纏めた本である。

04年に出版され、「セイバーメトリクス」という言葉や野球を見る、チームを作る視点を根本から覆した野球ファン向けの本として、また既成概念を打ち破り成果をあげたマネジメント手法のビジネス本として日本でも話題になった。


セイバーメトリクスの生みの親であり「野球抄」の著者ビル・ジェイムズ氏やメジャーリーグ関係者に頼らずメジャーリーグを分析したSTATS社など、外部の人々が新たしい分析手法を生み出したものの、これまでは球団内部からは評価されずにファンにのみ受け入れられてきた。

大坪正則氏の「パ・リーグがプロ野球を変える」でも、異業種出身の優秀な人達が貢献していることに触れているが、今回は加えて球団内部から賛同してデータによる分析を徹底して取り入れたGM(ビリー・ビーン)が現れたことが非常に大きい。

しかも元メジャーリーガーであり、自身の選手時代の苦い経験も踏まえてあらゆる前提を疑い、客観的事実で判断してきたマネジメントはビジネスパーソンには共感を得られる部分が多いかと思う。


2011年5月 3日 (火)

「パ・リーグがプロ野球を変える(大坪正則)」

プロ野球ビジネスに書かれた書籍として、大変内容が充実している。プロ野球ビジネスの現状と全体像を理解したいのであれば、最も情報量も豊富で強く推薦できる本である。

大坪正則氏は伊藤忠商事出身でNBAプロジェクトマネージャー等を経て、現在はスポーツ経営学専門の教授として書籍も多数出版されている。


パ・リーグ全球団について主に2004年から09年でどのように球団経営が変化し、現在どのような成果をあげているかと共に今後の課題も指摘している。
各球団それぞれが黒字化に向けた具体的な取り組みを、親会社やプロ野球全体の外部環境や「球場営業権」を球団が保有する重要性、マネジメントの視点から「クライマックスシリーズ必要性の有無」や「戦力均衡」などについても解説している。


一般的なビジネス知識をある程度持っていればいる程、この本を通じて得られることは多いと思う。
プロ野球ビジネスについてお勧め本の質問を受けたら(相手がビジネスパーソンであれば)、先ずはこの本を紹介する。

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